精神科デイケアとは?

精神科デイケアとは? ~ デイケアの歴史と理論 ~

歴史編

デイケアの歴史は1945年にイギリスの「J・ビエラ」とカナダの「D・E・キャメロン」が、それぞれ同時期に別の地域で始めた活動にさかのぼります。初めは「デイ・ホスピタル」という名称で、精神病院に変わる地域医療機関として、再発予防や退院促進の目的で創られました。1948年にアメリカ・エール大学とメニンガー・クリニックでデイケアが開始され、効果が実証されていくと同時に、各地にその活動が広がっていきました。
日本では1958年、国立精神衛生研究所で実験的に始められたのが最初と言われています。その後、1974年には医療保険に導入され、現在では全国1147ヵ所の病院やクリニックでデイケアが行われています。(2002年の調査による)

理論編

精神的な病気の場合、入院や外来での治療で(主に薬による治療ですが)ある程度、病気の症状は改善されます。しかし同時に、さまざまな障害をかかえることが少なくありません。例えば、病気が改善したと思い、職場や学校に戻ろうとしても、「不安や緊張が強い」、「疲れやすい」、「人との付き合いがうまくいかない」などの症状が残ることがあるのです。
 
このことを、他の例で考えてみましょう。
骨折をすれば薬で痛みを和らげ、外科的な整形手術やギプスをして、骨が再生されるように固定します。しかしその後、骨がつながったからといって、すぐに以前と同じように動かせるとは限りません。元の状態に戻るには、治療とともにリハビリテーションが必要になってきます。骨折の場合では、歩行や関節を動かす訓練を行ったり、おとろえた筋肉をトレーニングによって強化することになります。
 
精神的な病気にかかった時もこれと同じです。
無人島で生活しているわけではない私たちにとって、社会で生活するということは、人との付き合いや集団での活動が必要になります。これらは活動的で楽しい反面、傷ついたり、疲れたりと、とてもストレスを感じやすい状況でもあります。精神的な病気にかかったあとに残る障害とは、これらストレスのある状況に適応するための能力が低くなっていることを意味します。そのため、障害の程度によっては、リハビリテーションが必要となってきます。
そして、それを行うのがデイケアです。

実際編

デイケアの成り立ちと、その役割は分かってきました。それでは、デイケアでのリハビリテーションとは実際どんなことをするのでしょうか。デイケアでは、さまざまな活動があります。例えば、スポーツを楽しんだり、料理を作って食べたり、パソコンを習ったり、自由な時間を楽しんだりなど、本当にいろいろです。デイケア「オアシス」でも、さまざまなプログラムが用意されています。

しかし、これらのプログラム活動は、決してスポーツがうまくなるためでも、料理やパソコンの腕が上達するためのものでもありません。(もちろん、結果として上手になってもらいたいと願いますが・・・)
「料理」という1つのプログラムを例に考えてみましょう。

まず、

  1. グループで話し合ってメニューを決めます。
  2. 分担して買い物に行きます。
  3. 調理の手順を決めます。
  4. 調理の段取りを組みます。
  5. 実際に調理をします。

完成したら、

  1. 盛り付けをします。
  2. 配膳します。
  3. みんなで食べて料理を味わいます。

食事を楽しんだら、

  1. 片付けをします。
  2. 振り返りなどを行います。
  3. みんなで食べて料理を味わいます。

このように、「グループで料理をつくる」ことには、料理の技術を身に付けるだけではなく、何かの目的に対して、他人と共同して実現する力が必要になってきます。デイケアでは、社会生活で必要なそれらの力を身につけるために、プログラムというさまざまな場面が設定されているのです。言い換えれば、デイケアそのものが将来の目標となる社会に向けた、(バーチャルな)擬似体験の場とも考えられます。そこで「仕事がしたい」、「学校に行きたい」、「家族や友達と仲良く暮らしたい」など、あなたの目標に合わせた、リハビリテーションを行うことになるのです。

まとめ

これまでデイケアについて、その成り立ちから、実際の活動まで紹介してきました。中には少し難しい説明もあったかもしれません。体験して初めて分かることもあると思います。デイケアに通い始めると、プログラムやそこにいる人間関係を通して、集団の活動に慣れ、人との付き合いがうまくできるようになってきます。

最後に、精神科デイケアで一番大切なことをお伝えします。
それは、精神科デイケアとは、身体的(精神的)治療やリハビリテーションを行うとともに、真のこころのリハビリテーションを行うところでもあります。私たちが望んでいることは、本来もっている自分の強さを伸ばしたり、失った自信を回復してもらいたいと思うのです。いくら生活の技術を身に付け、社会に適応したとしても、自分で自信を持って、また喜び、楽しんで、何かを行っていけなくては、生活(人生)を続けることは難しいでしょう。デイケアに通うことで、病気や障害に負けない力となる、人生の喜びや楽しさ、強さを、身につけていってもらいたいとスタッフ一同、切に願っています。

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